Flow Orchestrationとは何か
Salesforce Flow Orchestrationは、複数のフロー、ユーザーの操作、承認ステップを組み合わせた長期的な業務プロセスを管理する機能です。通常のフローが「レコードが更新されたら即座にメール送信する」といった単発の処理に適しているのに対し、Orchestrationは「契約プロセスが開始されてから完了するまでの数日〜数週間にわたるプロセス全体」を管理します。
2026年に全エディションで標準フロータイプとして提供が開始され、追加費用なしで利用可能になりました。これにより、以前は有償だった機能が全てのSalesforce利用企業に開放されています。
通常のフローとの違い
| 観点 | 通常のフロー | Flow Orchestration |
|---|---|---|
| 対象 | 単発の自動化処理 | 複数ステップの長期プロセス |
| 実行期間 | 即座に完了 | 数日〜数週間 |
| 人間の関与 | 基本的に不要(自動実行) | 各ステップで人間の操作を待機 |
| 進捗管理 | なし | ステップごとの進捗追跡、滞留アラート |
| 並列処理 | 非対応 | 複数ステップの並列実行が可能 |
| エラー処理 | フロー内で処理 | Fault Pathで障害時の分岐が可能 |
Orchestrationの本質は「ステート管理」です。通常のフローはステートレス(状態を持たない)で、トリガーが引かれるたびに独立して実行されます。Orchestrationはステートフル(状態を持つ)で、プロセスのどのステップにいるか、誰が次のアクションを担当するかを追跡し続けます。
Orchestrationの構成要素
ステージ(Stage)
プロセスの大きなフェーズ。「契約準備」「承認」「顧客対応」「完了」のように、業務上の意味のある区切りで分割します。
ステップ(Step)
各ステージ内の具体的なアクション。以下の2種類があります。
- インタラクティブステップ: 特定のユーザーに画面フロー(入力フォーム等)を割り当て、操作の完了を待つ
- バックグラウンドステップ: 自動起動フローやApexを実行する(人間の操作不要)
割り当てルール
各ステップを「誰が」実行するかを定義します。特定のユーザー、ロール、キューに割り当てられます。
活用パターン
パターン1: 営業→CS引き継ぎの自動化
商談が受注した後のCS引き継ぎプロセスを自動化します。
ステージ1: 引き継ぎ準備
├─ ステップ1: [自動] CSMを自動アサイン(地域・業界ルールに基づく)
├─ ステップ2: [自動] 引き継ぎデータ(商談情報、顧客要件)をCS用オブジェクトに転記
└─ ステップ3: [営業担当] 引き継ぎフォームに追加情報(口頭での合意事項等)を入力
ステージ2: オンボーディング計画
├─ ステップ4: [CSM] オンボーディング計画を作成(画面フロー)
└─ ステップ5: [自動] 計画に基づくタスクを自動作成
ステージ3: キックオフ
├─ ステップ6: [CSM] キックオフミーティング実施、結果を記録
└─ ステップ7: [自動] ヘルススコア初期値を設定
このプロセスは通常1〜2週間かかります。通常のフローでは「受注時に一括処理」しか実現できませんが、Orchestrationならステップごとに人間の操作を待ちながら進行を管理できます。
パターン2: 複数部門にまたがる承認プロセス
大型商談の値引き承認など、複数の承認者を順番に(または並行して)経由する必要があるプロセスです。
ステージ1: 申請
└─ ステップ1: [営業担当] 値引き申請フォーム入力
ステージ2: 承認(並列実行)
├─ ステップ2a: [営業マネージャー] 承認/却下
└─ ステップ2b: [ファイナンス担当] 承認/却下(2aと並列)
ステージ3: 最終承認
└─ ステップ3: [営業部長] 最終承認/却下(金額が閾値以上の場合のみ)
ステージ4: 反映
└─ ステップ4: [自動] 承認された値引き率を商談に反映
並列実行(ステップ2a と 2b が同時進行)は、Orchestrationの強みです。通常の承認プロセスでは順次承認しかできませんが、Orchestrationなら複数部門の承認を並行して進められます。
パターン3: 新規顧客オンボーディング
契約後の顧客オンボーディングを段階的に管理します。
ステージ1: 初期設定
├─ ステップ1: [自動] アカウント設定(ライセンス発行、環境構築)
└─ ステップ2: [CS担当] 初期設定の完了確認
ステージ2: トレーニング
├─ ステップ3: [CS担当] トレーニング日程調整、実施
└─ ステップ4: [顧客担当者] トレーニング完了確認(外部フォーム連携)
ステージ3: 定着化
├─ ステップ5: [自動] 利用状況の自動チェック(2週間後)
└─ ステップ6: [CS担当] フォローアップミーティング実施
ステージ4: 完了
└─ ステップ7: [自動] オンボーディング完了フラグの設定、ヘルススコア更新
パターン4: Fault Pathによるエラーハンドリング
Orchestrationの「Fault Path」機能を使うと、ステップが失敗した場合の代替フローを定義できます。
例えば、自動メール送信ステップが失敗した場合に、担当者に手動対応のタスクを割り当てるFault Pathを設定する。API連携ステップがタイムアウトした場合に、リトライ処理を実行するFault Pathを設定する。
導入時の注意点
通常のフローとの使い分け
全てのプロセスをOrchestrationで管理する必要はありません。以下の基準で使い分けます。
通常のフローが適している場合:
- 即座に完了する処理(メール送信、項目更新、タスク作成)
- 人間の操作を待つ必要がない処理
- シンプルな条件分岐
Orchestrationが適している場合:
- 複数のステップが日をまたいで進行する
- 各ステップで異なるユーザーの操作を待つ必要がある
- 進捗の追跡と滞留の検知が必要
- 並列処理が必要
設計のベストプラクティス
- ステージは3〜5個に抑える: 細かすぎるステージ分割は管理コストを増やす
- 各ステップは単一責務: 1つのステップで複数の処理を詰め込まない
- タイムアウトを設定する: 各ステップに期限を設け、滞留時にアラートを送る
- Fault Pathを必ず設定する: エラー時の代替フローを定義しておく
まとめ
Flow Orchestrationは、部門横断の長期プロセスを自動化するSalesforceの機能です。2026年に全エディションで標準提供となり、追加費用なしで利用可能になりました。営業→CS引き継ぎ、複数部門承認、オンボーディングなど、「複数のステップが日をまたいで進行し、異なるユーザーの操作を待つ」プロセスで真価を発揮します。通常のフローとの使い分けを明確にし、複雑なプロセスだけをOrchestrationで管理するのが効果的です。
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ailead編集部
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