※1 GD(グループディスカッション):複数の候補者が1つのテーマについて議論する形式の選考。協働力や思考力を見る目的で使われる
※2 BR(ブレイクアウトルーム):Zoomなどのオンライン会議ツールで、参加者を少人数グループに分割する機能
営業AX・働き方AXを牽引し、自社でもAI活用を全社テーマに掲げるSansan株式会社。同社の新卒採用は、ビジネス職だけで年間100名を超えるという急拡大の只中にありました。
母集団形成期には、多くの学生さんから応募があります。質を取れば選考が滞留し、量を取れば十分に見極めきれないことが課題となっていました。毎年選考フローを作り替えながら模索してきた同社が選んだのは、GDの対話データをaileadで構造化し、AIエージェントが選考の初期段階を担う方法でした。
自社でもAIファーストを掲げ、AIプロダクトを自ら開発できるSansanが、選考評価の仕組みを"内製"するのではなく、あえてaileadを選びました。
「評価ロジックを自前で作れば、自社の視点に閉じた評価基準になってしまう懸念がある」、そう考えた同社が求めたのは、他社の知見に基づく客観的なAI評価でした。
なぜマンパワー増強でも、AI面接でも、既存の対話解析ツールでもなくaileadを選んだのか。新卒ビジネス職採用グループを率いる稲熊様にお話を伺いました。
質と量を両立できないか。フローを模索した日々
稲熊様と組織についてご紹介をお願いします。

Sansan株式会社で、新卒ビジネス職採用グループのマネジャーを務めております、稲熊理人と申します。当社は2007年の創業以来、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げ、営業AXサービス「Sansan」や名刺アプリ「Eight」、経理AXサービス「Bill One」、契約AXサービス「Contract One」など、働き方を変えるAXサービスを開発・提供している会社です。現在は東証プライム市場に上場し、従業員はグループ全体で2,000名規模になりました。
新卒ビジネス職採用に携わってからは、まずはリクルーターとして、選考を受けてくださった学生さんに伴走する形で採用活動に従事してきました。2年目には、サマーインターンシップの企画を立ち上げ、当社のセールス戦略立案をリアルに体験してもらうというプログラムを作りました。
3年目からはチームリーダーとして全体を見るようになり、現在はマネジャーとして新卒ビジネス職採用グループを率いています。現在のグループは、兼務メンバーを含めると10名ほど、専任メンバーは8名で、私を含めた9名が中心となって動いています。
ailead導入前、新卒採用の現場はどのような状態だったのでしょうか。
サマーインターンシップに向けた母集団形成期は、本当に毎年多くの課題を抱えていました。多くの方々に選考に参加していただきたいが、どうしても見極めにかけられる時間が減ってしまう。質と量を両立する方法を常に模索していました。
面接の数を絞ったり、グループ面接を導入したりと工夫はしていたのですが、メンバーの業務時間のほとんどを面接対応が占めているような状況になり、他の業務に十分な時間を充てられていない日々が続いていました。
それでも、インターンシップには優秀な方に参加していただきたい。とはいえ多くの方に当社のことを知っていただきたい。両方を実現する方法はないかと、ずっと考えていました。
選考プロセス自体も、毎年変えられていたそうですね。
本選考が本格的にスタートするのは秋以降ですが、春・夏の早期時期にも優秀な学生さんにSansanの魅力を伝えるため、選抜型のインターンシップを開催しています。その選考フローがグループ面接の年もあれば、人事が個別面接を2回行う年もあったりと、毎年変えていました。正解がわからない中で、その設計を毎年考えること自体も大変でしたね。
結局の解決策は、リソースをフル活用して頑張ってもらうしかなかったんです。ただ、単に人を増やすだけでは本質的な解決策にならず、限界を感じていました。
量だけでなく、質の面でも課題があったと伺いました。
書類の情報だけでは、当社で活躍いただけるかを見極めきれていませんでした。
当社で活躍する人材を見極められる選考設計にしたいと思うものの、それは本来長い時間をかけないと難しいものです。
どうしても限られた時間の面接だけでは、その方の持ち味を十分に捉えきれない。もっと画期的な方法があるのではないかと、ずっと考えていました。
きっかけは、採用人数拡大とAIファースト
取り組みに本腰を入れた、直接のきっかけは何だったのでしょうか。
大きく2つあります。1つは採用人数の拡大です。100名を超える規模の採用を行うにあたり、就活の早期化が進む中、早いタイミングでどれだけ多くの方と会えるかが勝負になると考えたとき、今までの方法では難しいと感じたのが最大の理由です。
もう1つはAI活用です。当社は全員がAIをフル活用できる組織にしていこうと、2025年は「AIファースト ※3」を年間テーマとして掲げていたので、採用・選考フローの中でもAIを活用できないか、というテーマはもともと俎上に載っていました。
※3 AIファースト:あらゆる業務においてAI活用を前提に考える、Sansanが掲げる方針

比較したのは4つの選択肢。「人と人のつながり」を手放さないことを重視
導入にあたって、どのような選択肢を比較されましたか。
大きく4つありました。1つ目は、改めてグループ面接でやり切れないか。2つ目は、SPI ※4 のような適性検査で選考できないか。3つ目は、AIを使わずにGD選考会を運営できないか。4つ目は、事前に説明・同意を得た学生に対して、既存の対話解析ツールを使えないか、ということです。
グループ面接は、受け入れ人数が限定的で、学生さんのことを十分に知ることができないまま終わってしまうことが懸念でした。SPIは、実際のコミュニケーションの様子を確認できない点から、当社の要件には合いませんでした。また、AIを使わないGD選考会は、1回で100人規模・15〜20のBRを見るのが現実的ではなく、見極めきれないリスクがありました。
最後まで検討したのが、既存の対話解析ツールの応用です。ただ、これは営業の商談分析に特化して作られたツールで、グループ名の修正やデータの整理など、こちらでやらなければならない作業が多く、工数削減にはつながりませんでした。分析の観点も営業向けで、GD選考の評価としての品質には懸念がありました。
※4 SPI:リクルートマネジメントソリューションズが提供する適性検査。能力・性格を測定する
AI面接ではなく、GDを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
一番重要視したのは、学生さんの体験です。AI面接自体は非常に良いものだと思います。ただ、当社は「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げている会社です。説明会の次のステップがAI面接です、というのは、人との出会いを大切にする当社のミッションにそぐわないなと。
その点、GDであれば、学生さん同士がちゃんと話し合うという体験そのものが作れる。終わった後に我々が解説をして、選考にかけている思いを伝えることもできる。人と人とのつながりを担保しながら選考できると考えました。GDに対応でき、かつ我々の機能要件を満たせるのがaileadだったんです。
決め手は他社知見に基づく客観評価
既存の対話解析ツールでは、何が足りなかったのでしょうか。
一番はAI評価の部分です。誰が何を発言したかを記録するのは他ツールでもできます。ただ、その先の“評価する”判断を他社知見を踏まえてAIエージェントに委ねられるかが重要です。評価のロジックを我々が自前で作ると、結局、自社の視点に閉じた評価基準になってしまう懸念がありました。
aileadであれば、他社での知見を注いでいただけるという点が一番の決め手でした。
もう1つは、分析して結果が出た、その先です。評価結果を当社のATS ※5 にどう入れて、実業務としてどう動かしていくのか。そこを導入前の段階からailead側と具体的に話ができて、今の業務フローを変更するイメージがつけられたのが、非常に大きかったですね。
※5 ATS(Applicant Tracking System):採用活動の候補者情報・選考状況を一元管理するシステム
AIの評価をそのまま信じていいのか、という懸念はありませんでしたか。
評価項目のチューニングは3回ほど、実際の録画を見ながらチェックをつけて、アウトプットデータを出力してもらいながらディスカッションを重ねました。評価項目を一緒に作り込んだことは、信頼につながったと思います。
もちろん、これで完全無欠な評価ができるとは考えていません。AIによる一次評価を受けて人事メンバーが録画を確認し、最終評価を決定するフローにしました。また、その後の選考進捗についてもきちんとウォッチし、評価基準を細かくチューニングし続けるという設計にしました。
選考効率約16倍、そして精度も裏付けられた成果
成果について伺います。選考効率で16倍という数字が出たそうですね。
選考にかかった総工数(延べ時間)で比べると、昨年のグループ面接でやっていた方法の約16倍の効率になりました。
そして、GDの評価とその後の選考進捗・評価にも相関があることがわかりました。
多くの学生さんに選考に参加いただけたと同時に、課題であった見極め精度についても担保できる状態を作ることができたのは、大きな成果だと感じています。

コスト面ではどうだったのでしょうか。
人件費としては、数百万円を超える削減効果がありました。これまで人手では絶対に不可能だった規模の選考を、ほぼ同じ予算で、見極めの質を担保したまま行えるようになりました。
AIによる評価に対して、採用チームの中で抵抗はありませんでしたか。
なかったですね。全社的にもAIを活用していこうという流れがあったこと、あくまでも一次評価として活用するという前提があったことから、むしろ肯定的でした。
私がメンバーに一番向き合ってほしいのは、学生さんとの面談に向きあい、人生の意思決定の伴走をすること。そこでSansanと価値観が重なる学生さんを採用することです。選考だけに時間を費やすと本来向き合うべきことに時間が使えなくなってしまいますから。
社内の承認プロセスでは、どのような論点がありましたか。
今までの方法では無理だという明確な事実と、AI活用という会社の方針にアラインしていたこともあり、大きな論点にはなりませんでした。
学生さんに対する同意取得については、イベント前、そしてイベント中にも説明をし、同意を得るフローにすることで解消しました。
費用対効果は、しっかり設計して算出しました。主眼は量です。この採用人数をやり切るには、この時期にこれだけの母集団を集める必要があり、人手で対応すると全員が3ヶ月張り付くことになる。それだけの体制を組まずにこの効果が出るなら、やらない理由はないよね、という判断でした。
選考データと入社後活躍をつなぎ、採用を科学する
蓄積された対話データを、今後どう活用していきたいとお考えですか。
採用は何のためかと言えば、事業成長に資するかどうかでしかありません。入社後の活躍者の共通点を出した上で、その人たちが選考時にどこで評価されていたのかを分析したいと考えています。
今までは各面接のコメントしか見られませんでしたが、その前のGDではどうだったのか、まで遡れるようになります。
就活が長期化する中で、就活初期と就活終盤では学生さんのパフォーマンスも変わってきます。そういう長いスパンでの分析を、何年かかっても、やっていきたいと思っています。
採用と入社後の活躍は、本当は一気通貫でつながるはずなのに、切り離されて考えられることが多いです。そこをきちんとデータで見ることができたら、世の中の新卒採用に携わる人がどれだけ助かるだろうと思います。
点ではなく、線で設計する
同じように採用・選考のデータ活用に悩む採用責任者・人事役員の方へ、メッセージをお願いします。
今回進めてきてやってよかったと思っているのは、これを単にリソース不足解消のためだけのソリューションとして捉えなかったことです。
面接での見極めはどうあるべきか。入社後の活躍との相関はどこにあるのか。先のフェーズを見越した上で、一番入り口のところで何をどう見極め、どう設計する必要があるのか。点での解決ではなく、線を捉えた上で入り口をどうするか、という順番の設計だと思うんです。
採用担当は基本みんな忙しいので、どうしても目の前の点の解決に向かいがちかなと思います。でも、最初の段階から線でブレイクダウンして設計できると、経営層との会話も含めて、いろいろなことが進みやすくなるのではないでしょうか。
AIは、使うのが当たり前と言われると、とりあえずやってみよう、となりがちですが、あくまで手段でしかない。何のためにという目的を、採用担当という視点から、事業成長・経営・組織の視点へどれだけ引き上げられるかが大事なのかなと思います。
最後に、採用組織として次に目指す姿を教えてください。
「新卒採用から会社を変える」ということを、メンバーみんなで目指しています。新卒採用は、人数ベースの目標が下ろされて、それに向けてどうやるかを考える仕事になりがちです。でもそれでは、期待に応えているだけ。会社が期待する新卒採用のさらに上を行き、事業成長に資する新卒採用を実現できたときに、はじめて会社を変えられると考えています。
そこに時間を使うためにも、入り口の選考をいかに効率よく、かつ質高くやるか。aileadは、そのための基盤になっています。







