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Cerebrasとは|NVIDIAに挑む「皿サイズAIチップ」創業者フェルドマンと事業モデル
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Cerebrasとは | NVIDIAに挑む「皿サイズAIチップ」創業者フェルドマンと事業モデル

ailead編集部

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2026年5月、NASDAQに1つのAI半導体企業が上場しました。ティッカーは「CBRS」、社名はCerebras Systems(セレブラス・システムズ)。公開価格は想定レンジを上回り、調達額は55.5億ドルに達しました。Snowflake以来、米テック企業として最大級のIPOです。

この企業が作るのは、皿ほどの大きさがある1枚の巨大なチップです。手のひらに乗る小さなGPUを何千個もつなげて計算するNVIDIAとは、正反対の発想でAIインフラに挑んでいます。

本記事では、S-1(上場目論見書)やIPO報道をもとに、Cerebrasの創業者アンドリュー・フェルドマンの経歴、ウェハースケール・エンジンという独特な事業モデル、そして本人がX・LinkedInで続ける挑発的なソーシャル発信までを、出典リンクつきで読み解きます。

創業者アンドリュー・フェルドマン:4社目の連続起業家

アンドリュー・フェルドマンは、スタンフォード大学で1991年に学士号、1997年にMBAを取得しました。両親はともにスタンフォードの教授という環境で育っています。

彼のキャリアは、AI企業の創業者というより、通信・半導体分野を渡り歩いた連続起業家のものです。まずRiverStone Networksに創業期から参画し2001年のIPOを経験。次にForce10 Networksでプロダクトと事業開発を率い、同社はのちにDellへ約8億ドルで買収されました。

そして2007年、フェルドマンはマイクロサーバー企業SeaMicroを創業します。データセンターの消費電力という課題に、低消費電力・高密度のサーバーで挑む会社でした。同社は2012年、AMDに3.34億ドルで買収されます。この売却が、次の挑戦の資金と人材の源泉になりました。

創業ストーリー:SeaMicroの5人が「GPUは最適ではない」と賭けた

Cerebrasは2015年、SeaMicro時代の仲間5人によって設立されました。フェルドマン(CEO)に加え、Gary Lauterbach、Michael James、Sean Lie(CTO)、Jean-Philippe Fricker という顔ぶれです。

彼らの出発点は、1つの技術的な確信でした。「AIの大規模計算に、GPUは最適な半導体ではない」。当時すでにNVIDIAのGPUがディープラーニングの標準になりつつありましたが、5人はそこに構造的な非効率を見ていました。GPUは元々グラフィックス処理のための汎用チップであり、AI専用に設計されたものではないからです。

ただし、その確信を形にする道は険しいものでした。1枚のウェハーを丸ごと使うという前例のない設計は、半導体の製造・パッケージング技術の壁に何度もぶつかります。Wikipediaによれば、Cerebrasは月800万ドルを燃やし、累計2億ドルを費やして、ようやく2019年7月に動作する製品にたどり着きました。

ウェハースケール・エンジン:半導体の常識を破った設計

Cerebrasの核心は、「ウェハースケール・エンジン(Wafer Scale Engine、WSE)」という独自チップにあります。

通常、半導体はシリコンの円盤(ウェハー)を数百個の小さなチップに切り分けて作ります。切り分けられる最大サイズには「レティクル限界」という物理的な上限があり、この制約が20年以上にわたってチップを切手ほどの大きさに留めてきました。フェルドマン自身がXで繰り返し語るテーマです。

Cerebrasはこの常識を破り、ウェハーを切り分けずに丸ごと1個のチップとして使います。世代ごとのスペックは次の通りです。

世代発表年トランジスタコア数プロセス
WSE-120191.2兆40万
WSE-220212.6兆85万TSMC 7nm
WSE-320244兆90万TSMC 5nm

最新のWSE-3は約46,000平方ミリメートル、まさにディナー皿ほどの面積を持ちます。NVIDIAの単体GPUと比べると桁違いの規模です。1枚のチップ内で計算が完結するため、複数チップ間でデータをやり取りする際のボトルネックが小さく、特にAI推論の速度で優位に立つというのがCerebrasの主張です。このCS-3システムは、Timeの「2024年のベスト発明」にも選ばれました。

事業モデル:システム販売から推論クラウドへ

Cerebrasの事業は、大きく2つの柱で成り立っています。

第1の柱は、WSE-3を搭載した「CS-3」システムそのものの販売です。企業や研究機関がAIインフラとして自社に導入します。第2の柱は、そのシステムへクラウド経由でアクセスできる推論・クラウドサービスです。AWS Marketplace、IBM watsonx、Hugging Faceなどのパートナー経由でも提供され、従量課金型の継続収益を生みます。

S-1が開示した2025年通期の内訳を見ると、この二本柱の姿がわかります。

セグメント2025年売上前年比粗利率
システム(ハードウェア)3.58億ドル+69%43%
クラウド・推論サービス1.52億ドル+94%30%

売上全体は2023年の7,900万ドルから2025年には5.1億ドル(前年比76%増)へと急拡大しました。全社粗利率は39%です。ただし営業損益は1.46億ドルの赤字で、一時的な会計要因を除いた調整後の純損益も7,570万ドルの赤字にとどまります。成長投資の段階にある企業の姿です。

将来を左右するのは、24.6億ドルにのぼる受注残(バックログ)です。その大半を占めるのが、2026年に発表されたOpenAIとの契約です。OpenAIは750メガワット分のCerebras計算能力の購入を約束しており、契約規模は報道によって100億〜200億ドル規模とされています。2025年時点でOpenAIからの売上はまだゼロですが、この巨大な後ろ盾が事業の期待値を押し上げています。

IPOと事業リスク:顧客集中という影

2026年5月14日、CerebrasはNASDAQに上場しました。想定レンジを上回る価格で値がつき、調達額は55.5億ドル。初値は公開価格を大きく上回り、フェルドマン個人の保有株の評価額は約34億ドルに達したとForbesは報じています。

華々しいデビューの裏には、S-1が率直に開示したリスクがあります。

最大の懸念は顧客集中です。2025年の売上は、アブダビの人工知能大学MBZUAI(62%)とAI企業G42(24%)という2社で86%を占めました。売掛金にいたってはMBZUAI 1社で約78%です。特定の少数顧客に売上を依存する構造は、その顧客の状況次第で業績が大きく揺れることを意味します。

顧客集中は改善の途上にはあります。G42への依存度は2024年の85%から2025年には24%へ下がりました。もっとも、集中先がMBZUAIへ移っただけとも言えます。加えて、G42との関係は米国の対米外国投資委員会(CFIUS)による安全保障審査の対象となり、G42の保有株を議決権のない株式へ組み替えることで上場にこぎ着けた経緯があります。

事業面のリスクも複数あります。製造をTSMC1社に依存し長期供給契約を持たないこと、NVIDIAという桁違いに大きな顧客とウェハーの割り当てを争うこと、推論クラウドの粗利率がデータセンターの稼働率次第で四半期ごとに大きく振れること。いずれも、皿サイズのチップという野心的な賭けの裏側にある現実です。

ソーシャルでの発信:NVIDIAへの挑発と「最速」の物語

フェルドマンを語るうえで外せないのが、そのソーシャル発信のスタイルです。彼はX(@andrewdfeldman)とLinkedInで、業界屈指の発信量を持つCEOとして知られています。

発信のテーマは一貫しています。1つは、レティクル限界やウェハースケール設計といった自社技術の物語。もう1つは、AI推論の速度です。Cerebrasは自らを「世界最速のAI推論・学習プラットフォーム」と称し、フェルドマンは次世代チップで推論を最大20倍高速化できると主張します。「NVIDIAのGPUから当社のクラウドへ推論を移すのは、10回ほどのキー入力で1分もかからない」という切り替えの容易さも繰り返し訴えます。

そして何より特徴的なのが、NVIDIAへの遠慮のない批判です。NVIDIAがスタートアップへ無償の計算クレジットを配る戦略について、フェルドマンは「彼らは麻薬の売人だ。『お嬢ちゃん、ちょっと試してごらん』というわけだ」と挑発的に評しました。NVIDIAが新興クラウドやモデル開発企業へ出資し、自社チップの採用を事実上囲い込んでいるとも批判しています。

一方で、市場全体への見立ては冷静です。AIインフラは「需要に先行しているのではなく、需要に追いついていない」と述べ、市場は複数の勝者を許容するほど大きいという立場を取ります。NVIDIAのGTCカンファレンス会場でパーティーを開いたという逸話は、こうした自信を象徴しています。過激な物言いと、市場の大きさへの楽観。この2つが同居しているのがフェルドマンの発信です。

日本企業への示唆

Cerebrasの軌跡とフェルドマンの発信は、AI活用を検討する日本企業にも3つの示唆を与えてくれます。

示唆1:差別化は「一点」に賭ける

Cerebrasは、汎用GPUで戦うのではなく「ウェハーを丸ごと1個のチップにする」という一点に賭けました。月800万ドルを燃やしても曲げなかったこの一点が、NVIDIAという巨人に挑む足場になっています。企業のAI活用も同じで、あらゆる領域で平均点を狙うより、自社の競争力に直結する1つの業務に技術とデータを集中させる方が、模倣されにくい差別化につながります。

示唆2:推論速度が新しい競争軸になる

AIの価値は、モデルの賢さだけでなく「どれだけ速く答えを返せるか」で決まる時代に入っています。AIエージェントが複数のステップを自律実行するとき、推論の遅延は業務全体のボトルネックになります。Cerebrasが推論速度に賭けているのは、この変化を読んでのことです。自社でAIエージェントを業務に組み込む際も、精度だけでなく応答速度が実用性を左右する点は意識しておきたいところです。

示唆3:技術の強さと事業の持続性は別物

Cerebrasは技術的には突出していますが、売上の86%を2社に依存する顧客集中という弱点を抱えます。優れた技術が、そのまま安定した事業を保証するわけではありません。AIツールやベンダーを選ぶ際も、性能だけでなく、その企業の顧客基盤や財務の健全性、供給の安定性まで見極めることが、長期的な導入判断では欠かせません。

出典

企業・財務情報

IPO・市場

発信・インタビュー

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まとめ

Cerebrasは、皿サイズの巨大チップという一点に賭けて、NVIDIAが支配するAI半導体市場に挑むスタートアップです。創業者アンドリュー・フェルドマンは、SeaMicroやForce10を売却してきた連続起業家であり、月800万ドルを燃やしながらウェハースケール・エンジンを実現しました。2025年に売上5.1億ドルへ急拡大し、OpenAIとの巨大契約を受注残に抱える一方、UAEの2顧客で売上の86%を占める顧客集中という弱点も同時に抱えています。

技術の突出と事業の脆さ、そしてNVIDIAへの挑発と市場の大きさへの楽観。この振れ幅の大きさこそが、Cerebrasとフェルドマンの本質です。推論速度が新しい競争軸になり、AIエージェントが業務を自律実行する時代において、この賭けが実を結ぶかは、AIインフラ市場の行方を占う試金石になります。

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